BtoB営業を長く続けていると、ある時期に必ずぶつかる問いがある。「この会社でこのまま続けていて、自分の年収は本当に上がるのだろうか」という問いだ。
私はIT系の外資で18年間、法人向けの高単価商材を扱ってきた。数千万から億単位の案件に何百回と関わってきた経験から言うと、BtoB営業という職種は「転職市場での相場」が非常に見えにくい。社内の論理で年収が決まりがちで、外の世界を知らないまま30代を過ごしてしまう人が、個人的な実感では半分くらいいると思う。
この記事では、転職を考えているBtoB営業の方に向けて、現場目線で「年収アップできる転職」の現実を話していきたい。
BtoB営業の転職市場、実態は思ったより動いている
「動かない市場」という思い込み
BtoB営業職は、転職市場が動きにくいというイメージを持たれることがある。長期商談に関わるため「引き継ぎが大変」「取引先への義理がある」という心理的なブレーキが働くのだろう。ただ、採用側から見ると話は全然違う。
法人向けの営業経験者、とくに数千万規模の商談を担当したことがある人材は、どの業界でも慢性的に足りていない。私の周囲で転職した同世代の営業マンを見ていると、経験10年前後で動いた人のほとんどは年収が上がっている。ざっくり1.3〜1.5倍というイメージだ。もちろん全員がそうとは言い切れないが、「BtoB営業の転職はリスクが高い」という感覚は少し更新してもいいかもしれない。
評価されるのは「何を売ったか」より「誰と交渉したか」
転職活動をするとき、多くのBtoB営業は「売上達成率」や「担当製品」をアピールしようとする。もちろんそれも大事だが、私の経験では、採用担当者や面接官が本当に聞きたいのは「どの役職の人間と商談を進めてきたか」という部分だと思う。
購買担当者と話してきたのか、CFOや事業部長と直接折衝してきたのか。この差は、転職先での想定年収に意外と直結する。法人営業の経験年数よりも「どのレイヤーと仕事をしてきたか」の方が、市場価値として評価されやすい。
私がやらかした失敗と、そこから気づいた自分の市場価値
少し恥ずかしい話をする。
入社から数年が経ち、ある程度自信がついてきた頃のことだ。大手製造業への初回提案で、私は事前に「決裁者は部長です」と教えてもらっていた。当日、会議室に案内されると、40代後半とおぼしき落ち着いた雰囲気の男性が待っていて、私は当然その人が部長だと思い込んだ。
名刺交換をして、「本日はお時間をいただきありがとうございます」と言いながら提案を進め、価格の話も踏み込んでした。反応も良く「前向きに検討します」という言葉までいただいた。
後日、担当の窓口の方から連絡があった。「先日いらっしゃったのは部長の秘書の方で、部長ご本人はご都合が悪くなり欠席されていたんです」と。
穴があったら入りたいとはこのことで、私は決裁権のない方に1時間かけて価格交渉の話まで持ち込んでいたわけだ。プロセスをまるごとやり直しになった。
この経験で痛感したのは、「誰に話しているか」を確認する習慣がいかに大切かということ。そして転職活動でも、これとまったく同じ構造のミスをしている人がいる。「面接でいい感触だった」と思っても、その面接官が採用に関わる権限を持っているかどうかは別の話だ。
エージェントを使う価値のひとつは、こういう「意思決定構造の把握」を代わりにやってくれることにある。
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年収アップにつながる転職先の見極め方
「インセンティブ型」か「基本給型」かを最初に確認する
転職先を選ぶとき、提示された年収額だけを見て判断するのは危ない。BtoB営業の報酬体系は大きく分けて「基本給が高く、インセンティブが少ない」タイプと「基本給は控えめで、成果連動が大きい」タイプに分かれる。
外資系企業はとくに後者が多い。私が所属してきた会社もそうで、達成率によって年収が前後するため、提示されたパッケージの数字通りにもらえるとは限らない。一方で、達成すれば日系大手の同年代より明らかに多くなる場面もある。
どちらが良いというより、自分の営業スタイルと商材との相性で選ぶべきだと思う。長期の関係構築型営業が得意な人が、短サイクルの成果連動型に移ると逆に苦しくなることがある。
業界選びより「商材の平均受注額」で選ぶ
これは現場の人間じゃないと意外と気づかないポイントだが、転職先の業界より「1案件あたりの平均的な受注金額」の方が、長期的な年収に影響しやすい。
高単価商材を扱う営業職は、採用時の期待値が高いぶん給与水準も底上げされやすい。また、身についたスキルセット(大型案件の提案書設計、複数のステークホルダー調整、稟議プロセスの把握など)は他社でも再現性が高いため、次の転職時にも有利に働く。
正確な統計は知らないが、私の周囲を見ていると「億規模の案件を担当した経験がある」という一言で、面接のトーンが変わるケースが多いように思う。
転職エージェントの使い方、BtoB営業ならではの注意点
「法人営業経験者」と「BtoB高単価営業経験者」は別物として扱われる
転職エージェントに登録すると、「法人営業経験あり」という括りでまとめて求人を紹介されることがある。これが意外と雑で、BtoCの店舗向け営業も、BtoBの小口ルート営業も、大型案件のエンタープライズ営業も、同じ「法人営業」として一緒くたになっていることがある。
自分のキャリアを正確に言語化してくれる担当者かどうかを、最初の面談で見極めることが大事だ。「あなたが担当してきた案件の規模感」「意思決定者の役職」「商談期間」をきちんと拾って、強みに変換してくれるエージェントを選んでほしい。
非公開求人にBtoB営業の好条件案件が眠っている
これは業界の人間なら頷いてもらえると思うが、ハイクラスのBtoB営業ポジションほど、公開求人に出てこない。理由はシンプルで、公開すると現職の取引先や業界関係者に伝わるリスクがあるからだ。
外資系の事業部長クラスのポジションや、スタートアップの営業部門立ち上げポジションなどは、エージェント経由でのみ動いているケースが少なくない。転職サイトだけ見て「いい求人がない」と判断するのは、もったいないと思う。
まとめにかえて
BtoB営業の転職で年収を上げるのは、不可能でも運任せでもない。ただ、「自分の経験を正しく言語化できているか」という点で差がつきやすい職種でもある。高単価商材の経験、決裁者との交渉実績、長期案件のプロセス設計力——これらは他業種から来た採用担当者には伝わりにくい言葉で表現されていることが多い。自分の市場価値を「社内の論理」ではなく「転職市場の言葉」に翻訳してくれる相手と一緒に動くことが、年収アップの転職への近道だと個人的には思っている。
この記事を読んで転職を考え始めた方は、次のステップとして「非公開求人の確認」と「書類の市場価値テスト」を同時に進めることをおすすめしたい。BtoB営業の転職に関連して、「ハイクラス転職」「エンタープライズ営業 求人」「外資系営業 転職 年収」といったキーワードで調べてみると、より具体的な相場観が掴めてくるはずだ。
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この記事は、外資系IT企業で法人営業を18年経験した現役フィールドセールスが、個人的な経験と見解をもとに執筆しています。特定企業への言及は含みません。


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